西の魔女が死んだ (2008) »レビュー

信じていることを話しましょう

70点 2008/06/23 by のびた

西の魔女が死んだ

当初原作ではあまり感動しなかったのに、原作通りに描いた映画で、少しうるっときてしまった。最近どうも涙線が緩くなっているようだ。最初から、西の魔女が死ぬことはわかっていたのに。

ここはやはりサチ・パーカーの魅力だろう。シャーリー・マクレーンの娘とは知らなかった。とても上品なレディだ。そして丁寧にしゃべる日本語の、何と慈愛に満ちていることか。娘や孫に向けられるその愛情、そして大自然を慈しむような質素な生活。

動物も植物も、平等に包みこむ、大自然の優しさと大らかさが、人に優しい気持ちを取り戻させる。そして時に荒れる、不機嫌な時の山の風景は、人の心に恐れとか、勇気を与える。そんな中で育った子供は、さぞ感情や表現力が豊かに育まれることだろう。

街の生活で、心に傷を負った孫娘のまい。そして街のギスギスした感情を、そのまま森に持ち込み、土地の人を色眼鏡で見てしまう。乱暴そうなゲンジさんに、自分の心の闇の部分、汚い部分をすべて投影してしまうのだ。一度そう思いこんでしまうと、彼のやることがみな悪いことに思えてしまう。

そんなまいには、心の修行が必要だった。それが魔女修行だ。早寝早起きや、規則正しい暮らしのどこが魔女修行?と大人ならまず疑うが、まいはそれを信じるところが、まだ見込がある。純粋な気持ちが、多分に残されているからだ。

母親が言う。「あの人は本物の魔女よ」
まいは言う。「おばあちゃんはいつも私に自分で決めろっていうけれど、私、何だかいつもおばあちゃんの思う方向にうまく誘導されているような気がする」。おばあちゃんの、魔女たる所以ではなかろうか。

そして迎える…。

あのメッセージを素直に受け取れるまいの心は、また一歩魔女に近づいた。しかし、これは卒業ではなく、魔女修行はまだまだ続くだろう。おばあちゃんの魂が、まいの心で生き続けている限り…。

原作のラストを読みなおしてみた。不思議なことに、初めて読んだときより、数段素晴しく感じた。原作には、もうひとつお話がついている。
「渡りの一日」という短編で、その後のまいの、ある一日が描かれている。友達に翻弄される、少し不思議な物語。
これが少しいい。

PS 祖母のもとに孫がやってきて、人生を学び、そして去っていく物語。「佐賀のがばいばあちゃん」をどうしても思い出してしまう。孫が去る時の、おばあちゃんの淋しさは、とてもつらいのではないかと思う。この映画でも一瞬写る、野いちごのジャムが、思い出の象徴のようで哀しかった。

それから、この映画と原作でも、ひとつ分からないことがある。まいが見る夢のシーンだ。暗い海を泳いでいると「西へ」という声が聞こえる。
こういうシーンがあると、後々、彼女がこの声に助けられるとかいう展開が待っているものなのだが、この作品ではほったらかしだ。単におばあちゃんの祖父と祖母の話の“受け”なのだろうか?

 

5人がこのレビューに共感したと評価しています。
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  • Re: 信じていることを話しましょう

    2008/06/24 by ekoeko

    あ、
    シャーリー・マクレーンの娘さんなんですか。
    それは知りませんでした。
    あ、
    でも思い出しました。
    シャーリー・マクレーンて
    たしか日本にいたことがあるんですよね。
    ちがったかな。
    その娘さんの名が日本っぽくて
    なるほどと思った記憶があります。
    でもこの記憶、われながらあやしいな。

  • Re: 信じていることを話しましょう

    2008/06/24 by のびた

    ekoekoさん、物凄い数のレビューですね。圧倒されます。

    僕も知らなかったのですが、サチ・パーカーは二歳から十二歳まで、日本で暮らしていたそうです。ですから、当然そのとき、シャーリー・マクレーンも一緒にいたことでしょう。
    名前は日本のサチコからとったようです。それも小森和子がすすめたとか…。

    さて、映画の点数的には、ekoekoさんより低いですが、僕は好きな作品です。
    サチ・パーカーの起用が、成功の大きな要因でしょうね。しかし、彼女のこと、これまでまったく知りませんでした。何か他の作品にも出演しているんでしょうか?
    ご存知の方いらっしゃいましたら、お教えください。

  • Re: 信じていることを話しましょう

    2008/07/04 by けん坊

    サチ・バーカーの作品についてはほとんど知識はありませんが・・・

    サチの由来はサチコからですが、これは原子爆弾の被爆で死んだ日本人の幼女サチコが日本で軍の仕事についていたパーカー氏(サチ・パーカーの父親)になついていたのに因んで付けたということです。
    サチ・パーカーは12歳まで日本で、その後はスイスなどで学校付属の寄宿舎で育っています。ただしその間にシャーリー・マクレーンと一緒に住んだ期間はほとんどなくて、シャーリーは映画の仕事がない時にバカンスを取ってサチのところへ来て短期間一緒に過ごすくらいだったそうです。

    テレビで見た実際のサチ・パーカーはこの映画からは想像も出来ないくらい若くて美人でしたよ。

    本名のミドルネームはサチコですね。
    Stephanie Sachiko Parker

  • Re: 信じていることを話しましょう

    2008/07/04 by のびた

    けん坊さん、情報ありがとうございます。

    そうですか、シャーリー・マクレーンとは、ほとんど一緒に住んだことがないのですか。それも何だか可哀そうな幼少期ですね。

    サチ・パーカーは最近、TVに出たのでしょうか。それは是非とも見たかったです。映画より若くて美人だったということは、映画用の老けメイクだったんでしょうね。

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