L.A.コンフィデンシャル (1997)
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佐々木譲・著「警官の血」新潮社
2008/07/04
by
牧坂満
曇天のロサンゼルスを象徴するかのような暗く濃厚なハードボイルドの傑作です。映画冒頭ではロサンゼルスの魅力をドキュメント画像を使用してアピールしていきます。仕事もあり、不動産価格も安価なので一戸建て住宅に住むことも可能であり、ハリウッドの映画スターになることも出来るエデンの園である。しかし、マフィアによる麻薬・恐喝・売春・殺人をロサンゼルスの汚点として告発してから物語が始まります。
群青色の青空も、好景気に沸き立つ1950年代の楽天主義も、本作品には登場してきません。濃厚なプロットからは腐敗臭が立ち上り、主人公たち三人の刑事が登場するのです。直情径行型のバド・ホワイトを演じるのはラッセル・クロウ。冷徹ながらも計算高いエド・エクスリーに扮するのはガイ・ピアース。権謀術数型で狡猾な知恵で世渡り上手なジャック・ビンセンズ役はケビン・スペーシーという魅力溢れる性格俳優たちが三人三様の屈折と翳りに彩られているという重層的演出が見事です。
忠実に再現された1950年代のロサンゼルスも、ノスタルジアに浸ることなく、曇天により遮断された太陽光、淫靡で不穏な空気、殺伐な街の感触、荒んだ振る舞いをみせる人々、こんなミステリアスなムードが横溢する中で、一筋縄ではいかない「L.A.コンフィデンシャル」の物語は進んでいくのです。練りに練られた脚本、三人の刑事役意外にも名脇役たちを配した絶妙なキャスティング、ガンマニアからすると12口径のレミントンショットガン5連発が重要なポイントであり、映画でもキィワードの小道具になっています。このフィルムノワールが名作としてリストアップされるか否かは時が解決してくれるでしょう。
優秀な刑事が合法的捜査活動と非合法の間(はざま)で苦悩することは、日本のミステリー小説、佐々木譲による新潮社の「警官の血」でも描かれていますが、「L.A.コンフィデンシャル」でも重要な場面で刑事たちが身銭をきっていることが描かれています。起訴を確実にするための証拠捏造。自白させるためには容疑者に暴力を行使することも躊躇しない。厚生の望みがない犯罪者は背後からでも射殺する。人権派弁護士からすれば格好の訴訟材料になるでしょうが、重犯罪者たちの心情は全く救いようがないことも現実問題なのです。警察官の解決方法で賛否両論になった「ブレイブワン」のラストシーンも肯定出来るきっかけにもなるでしょう。錯綜するプロットは複雑怪奇なので、集中して鑑賞しないと置いてきぼりにされてしまいますが、覚悟と努力さえすれば、カーティス・ハンソン監督は、見えない場所で轟々と流れる大瀑布の水音をしっかりと観客の耳に届けてくれます。
そして、やはり映画はエンドクレジットまでしっかりと鑑賞しましょう。本作品でも二回、意味のある映像が流れます。
【劇場名不詳】劇場鑑賞
【ビデオ・マイコレクション】鑑賞
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