ツィゴイネルワイゼン (1980)
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女狐
2008/06/08
by
星空のマリオネット
「ツィゴイネルワイゼン」・・・私にとってこの映画は鬼門でした。
今村昌平監督の「復讐するは我にあり」がキネ旬のベスト1をとった翌年・1980年度のベスト1が、鈴木清順監督の「ツィゴイネルワイゼン」。(黒澤明監督の「影武者」に大差をつけての1位)
当時、この映画の良さがまったく分からず、それがトラウマになったのか鈴木清順監督の映画はそれ以来一本も観ていません。当時批評家が大変高く評価した映画の中では、森田芳光監督の「家族ゲーム」(1983年)と並んで、その良さが理解できなかった映画。
未知なる世界や未知なる表現について行くことができない自分自身に、正直、がっかりさせられた記憶があります。
前置きが長くなってしまいましたが、今回久々に観てみて、これが面白かった。
映画に没入するように観ていた学生時代よりは、今の方が余裕をもって映画を楽しめるようになっているせいでしょうか。この人工的であざとく奇妙な世界を結構楽しみながら散策することができたのです。
甘美な悪夢。
監督が本職の藤田敏八の端正で生硬な芝居もいいけれど、大楠道代の妖しくエロチックな表情や所作が何と言っても圧倒的。さながら男を化かす妖艶な女狐のよう。やけに食べるシーンの多い彼女の嬉しそうな姿は、朱色の鳥居の奥、拝殿に奇麗に供えられているご馳走を品よく貪る狐のよう。
下士官学校独逸語教授の青地(藤田敏八)を取り巻く世界には不可思議な点がある。元同僚で浮浪者のような旅人中砂(原田芳男)、青地の妻・周子(大楠道代)、中砂の妻・園と芸者・小稲(大谷直子の二役)、老人と若い男と女の盲目の芸人トリオ・・・どこか常軌を逸した人間たち?
浜辺に打ち上げられた女の死体を前に村の人々に詰め寄られる中砂(原田)をどこからともなく助けに現れた青地(藤田)。その青地に対し、殺した女から真赤に染まった蟹が何匹も這い出てきたとうそぶく中砂。
赤い斑点に肌を冒され、中砂の眼球を舌で舐める周子(大楠)。
鍋を覆いつくしてしまうほど、コンニャクを際限なくちぎっている美しい園(大谷)。
存在そのものが猥雑な芸人三人組。
大楠道代の助演女優賞は文句なしだと思います。
ただ、主演女優賞をとった大谷直子はかなり物足りなく感じてしまいました。美人ではあったのですが、身のこなしとか表情のメリハリとか・・・
やはり少し残念です。
PS
この週末、所用があって数年ぶりに京都に行ってきました。
今日は時間があったので、銀閣寺の参道から哲学の道をしばらく歩いたあと右に入り、観光スポットからちょっと離れた寺社を巡る。
「真如堂」と「吉田神社」。
ひっそりとした小径から狭い石段を登りきると、目の前に急に広がる一面モミジの新緑の美しさ。昨夜の雨に洗われ陽の光を浴び輝く細かな葉の群れに囲まれ、真如堂の三重塔を眺めていると、遠くから読経の声が聞こえてくる。
さらに吉田山の坂道にある住宅地を過ぎ、吉田神社の大元宮から本宮へ。
朱色のまるで小型の宇宙船のような大元宮。国の重要文化財にも指定されているごく小さな社。日本中の神様が集まっているという奇妙な空間。
本宮では神事の準備が整えられていて、朱色の空間にまさしく狐がすまし顔で登場しそうな雰囲気です。
今日は森とした神秘的な空気に浸ることができました。
映画「ツィゴイネルワイゼン」の舞台は鎌倉だそうですが、京都と似ているようにも思います。狐のイメージは、吉田神社のイメージでもありました。
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